内なる声に耳を傾けすぎず、自分を大切にする自己肯定感ワーク
自己肯定感が低いと感じる時、心の中で自分を否定したり、責めたりする声が聞こえることはありませんか。周りの人と比べて「自分はダメだ」と感じたり、新しいことに挑戦しようとする時に「どうせうまくいかない」と立ち止まってしまったり。こうした悩みは、あなたの心の中にいる「内なる批判的な声」が影響しているのかもしれません。
この内なる声は、必ずしも悪いものではありません。あなたを守ろうとしたり、もっと成長してほしいと願っていたりすることもあります。しかし、その声が過剰に厳しかったり、現実からかけ離れていたりすると、自己肯定感を大きく下げてしまいます。
この記事では、そんな内なる批判的な声と適切につきあい、自分を大切にするための具体的なワークをご紹介します。どれも手軽に始められるものばかりですので、ぜひ試してみてください。
自己肯定感を下げる「内なる声」とは
ここで言う「内なる声」とは、あなたの頭の中で繰り返し再生される、自分自身に向けられた批判や否定のメッセージのことです。例えば、「もっとちゃんとしないと」「どうしてこんなこともできないの」「あの人に比べて自分は劣っている」といった考えが自然と湧いてくることがあるかもしれません。
この声は、過去の経験や育ってきた環境、周囲の人からの評価などがもとになって形成されると言われています。本来は危険から身を守ったり、社会に適応したりするために役立つ機能ですが、それが強すぎると自分自身を追い詰める原因になってしまうのです。
この内なる声に耳を傾けすぎると、自分には価値がないと感じたり、失敗を極度に恐れたりするようになり、結果として自己肯定感が低下してしまいます。しかし、この声は「あなた自身」ではありません。あなたの思考パターンの一部であり、意識的にその声との距離を置くことができます。
ワーク1:内なる声を「観察」する
まず最初の一歩は、あなたの内なる声がどんな時に、何を語りかけてくるのかを知ることです。これは、自分自身を客観的に見つめる練習になります。
実践方法
- ノートやスマートフォンのメモ機能を用意します。
- 日常生活の中で、自分を責めたり、否定したりする考えが頭に浮かんだ瞬間に気づくように意識します。
- 気づいたら、その考えをすぐに批判したり、打ち消そうとしたりせず、ただ「観察」します。
- 以下の点を記録してみましょう。
- どんな状況でこの声が聞こえましたか?(例:仕事でミスをした時、SNSで他人と自分を比較した時)
- 内なる声はあなたに何を語りかけていますか?(例:「本当にあなたはダメだ」「だからあなたは一人なんだ」)
- その声を聞いた時、あなたはどんな感情を抱きましたか?(例:悲しい、悔しい、不安、無力感)
- その声は、誰かの言葉に似ていますか?(例:過去に言われた言葉)
- 1週間ほど続けて、自分の内なる声のパターンを把握してみましょう。
期待される効果
内なる声を単なる「思考」として捉え、自分自身と切り離して考える練習になります。これにより、声に感情的に反応するのではなく、少し距離を置いて見つめることができるようになります。
実践上のコツ
記録する際に、自分自身を責めるような気持ちにならないことが大切です。「またこんなこと考えてる…」と落ち込むのではなく、「あ、今こんな声が聞こえたな」と、鳥を観察するような軽い気持ちで取り組みましょう。
ワーク2:内なる声に「距離を置く」
内なる声のパターンが少し見えてきたら、次にその声との距離を置く練習をします。声に支配されるのではなく、その影響力を弱めることを目指します。
実践方法
いくつかの方法がありますので、試しやすいものから選んでみてください。
- 声に「名前」をつける: 内なる批判的な声に、ニックネームのような名前をつけてみます。(例:「厳格先生」「心配屋」「比較魔」「ダメ出し君」など) 声が聞こえた時に、「あ、また厳格先生が何か言ってるな」のように、声と自分を区別して捉えやすくなります。少しユーモラスな名前をつけると、深刻になりすぎるのを避けられます。
- 声のイメージを変える: 内なる声が頭の中で響いている様子をイメージし、そのイメージを意図的に変えてみます。(例:ラジオのボリュームを小さくする、遠くで聞こえる声だと思う、アニメキャラクターの声に変えてみる) これにより、声に圧倒されにくくなります。
- 言葉遣いを変える: 内なる声の言葉を、少し客観的な表現に変えて声に出したり、心の中で唱えたりします。(例:「私はダメだ」→「『私はダメだ』という声が聞こえる」) 「〜という声が聞こえる」という一文を加えるだけで、声は自分自身ではなく、聞こえてくる「音」や「情報」の一部として捉えられるようになります。
期待される効果
内なる声と自分自身を同一化することを避け、声の影響を受け流しやすくなります。声の言葉に振り回されなくなり、心の平穏を保ちやすくなります。
実践上のコツ
これらの方法は、あくまで「距離を置く」ための技術です。声そのものを完全に消そうとする必要はありません。また、うまくいかない日があっても自分を責めないでください。これも練習です。
ワーク3:自分を「ねぎらう言葉」を見つける
内なる批判的な声は、自分を否定するメッセージを発します。そのバランスを取るために、自分をサポートし、肯定する新しい「内なる声」を育ててみましょう。
実践方法
- 静かな場所でリラックスします。
- もし、あなたの親しい友人が今のあなたと同じような状況で悩んでいたら、どんな言葉をかけて励ましますか?温かく、寄り添うような言葉を考えてみましょう。
- 次に、もし過去の自分に今のあなたが声をかけられるとしたら、どんな言葉を選びますか?大変だった自分、頑張っていた自分に送るメッセージを考えてみましょう。
- これらの言葉の中から、今のあなた自身が一番必要としている、心地よく感じる言葉を選びます。(例:「大変だったね、よく頑張っているね」「あなたの価値は周りの評価で決まるものではないよ」「失敗しても学びがあるよ」「あなたは愛される価値がある」)
- 選んだ言葉を、一日の始まりや終わりに声に出して言ってみたり、心の中で繰り返し唱えたり、手帳に書き出したりします。
期待される効果
内なる批判的な声だけでなく、自分を支える肯定的な声も心の中に持つことができるようになります。自分自身に優しく接する練習になり、自己肯定感を内側から育むことにつながります。
実践上のコツ
最初は照れくさく感じるかもしれません。完璧な言葉でなくて大丈夫です。心から自分がねぎらわれると感じる、やさしい言葉を選んでください。また、無理に信じようとせず、ただ自分に向けて語りかけてみることが大切です。
ワークを続ける上でのヒント
ご紹介したワークは、一度行えばすぐに劇的な変化があるというものではありません。自己肯定感の向上は、毎日の小さな実践と意識の積み重ねによって育まれます。
- 焦らない: 効果を急がず、自分のペースで取り組みましょう。
- 完璧を目指さない: ワークがうまくできない日があっても、自分を責めないでください。それも含めて自然なことです。
- 継続する: 短時間でも良いので、毎日の習慣にすることを目指すと、少しずつ変化を感じられるでしょう。
- 小さな変化に気づく: 内なる声に少し冷静に対応できた、自分にやさしい言葉をかけられた、といった小さな成功体験を見つけて自分自身をねぎらいましょう。
まとめ
自己肯定感を下げる内なる批判的な声は、多くの人が心の中に抱えているものです。しかし、その声に振り回されず、適切につきあうことで、自分自身をより大切にできるようになります。
今回ご紹介した「内なる声を観察する」「内なる声に距離を置く」「自分をねぎらう言葉を見つける」という3つのワークは、そのための具体的なステップです。
これらのワークを通して、あなたの心の中のスペースが広がり、内なる声に耳を傾けすぎることなく、あなたの本来の価値や可能性に目を向けられるようになることを願っています。焦らず、一つずつ、あなたのペースで試してみてください。自分を大切にすることから、自己肯定感はゆっくりと育まれていきます。