自分の「好き」を知って自己肯定感を育むやさしいワーク
自分の「好き」を知って自己肯定感を育むやさしいワーク
「どうしてあの人はあんなに楽しそうなのだろう」「自分にはこれといった得意なことも好きなこともない」
つい他人と比べてしまい、自分に自信が持てなくなってしまうことはありませんか。新しいことに挑戦しようと思っても、「どうせ自分には無理だ」と立ち止まってしまうこともあるかもしれません。
自己肯定感が低いと感じているとき、私たちはつい自分の「できないこと」や「持っていないもの」に目を向けがちです。しかし、自分の内側にある「好き」という気持ちに意識を向けることで、少しずつ自分らしい軸を取り戻し、自分自身を肯定する力を育むことができます。
この記事では、身近な「好き」を通して自己肯定感を高めるための、具体的でやさしいワークをご紹介します。特別な準備は必要ありません。紙とペンがあれば、すぐに始めることができます。
なぜ「好き」が自己肯定感につながるのか
「好き」という感情は、私たちがポジティブに反応し、価値を感じる対象に向けられます。自分の「好き」を知ることは、つまり「自分が何を大切にしているのか」「どんなことに心地よさを感じるのか」といった、自分自身の内側にある感覚や価値観に気づくことです。
他人と比較して落ち込むとき、私たちはしばしば社会的な基準や他人の価値観の中で自分を評価しています。しかし、自分の「好き」は、他人がどう思うかに関わらず、自分自身から生まれる純粋な感覚です。
自分の「好き」を認め、大切にすることは、「これが好きだと感じる自分にOKを出す」という自己承認の小さな積み重ねになります。これにより、他人軸ではなく自分軸で物事を捉える感覚が養われ、自分自身の多様な側面を受け入れる力が育まれるのです。
自分の「好き」を見つけるためのワーク
ここでは、自分の「好き」に気づき、それを自己肯定感につなげるための3つのステップをご紹介します。焦らず、ご自身のペースで取り組んでみてください。
ワーク1:身近な「好き」リストアップワーク
まずは、あなたの周りにある、小さくても「好きだな」「心地よいな」と感じるものを自由に書き出してみましょう。
手順
- 紙とペンを用意します。ノートの1ページを使うのがおすすめです。
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以下の質問について、頭に浮かんだものを制限なく書き出していきます。箇条書きでも、単語でも構いません。
- 見ていて「好きだな」と感じるもの(景色、色、デザイン、アート、動物など)
- 聞いていて「好きだな」と感じるもの(音楽、自然の音、人の声など)
- 触っていて「好きだな」と感じるもの(素材、肌触りなど)
- 匂いを嗅いで「好きだな」と感じるもの(香り、食べ物の匂いなど)
- 味わって「好きだな」と感じるもの(食べ物、飲み物など)
- 行っていて「好きだな」と感じる場所(カフェ、公園、本屋、自宅の一角など)
- やっていて「好きだな」と感じること、時間(散歩、読書、料理、ぼーっとする時間、特定の作業など)
- 身に着けていて「好きだな」と感じるもの(服、アクセサリー、手触りの良いものなど)
- その他、「これ、好きだな」と漠然と感じるもの
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量は問いません。思いつく限り、たくさん書き出してみましょう。「こんな小さなことでいいのかな」と思うようなことでも大丈夫です。「人からどう思われるか」は一切気にせず、純粋な自分の感覚に集中してください。
期待される効果
このワークは、普段意識していない自分のポジティブな感覚に目を向ける練習になります。日常の中に、自分が心地よさや喜びを感じる瞬間や対象が意外とたくさんあることに気づくきっかけとなるでしょう。自分を構成する要素として、「好き」というポジティブな側面があることを再認識できます。
ワーク2:「なぜそれが好きなのか」を掘り下げるワーク
リストアップした「好き」について、もう少し深く掘り下げてみましょう。なぜそれに惹かれるのか、どんな感覚や感情が伴うのかを探ります。
手順
- ワーク1で書き出したリストを見返します。
- それぞれの「好き」について、「なぜこれが好きなのだろう?」と問いかけてみます。
- 例:「晴れた日の午前中の光が好き」→ なぜ? → 「暖かくて気持ちが良いから」「部屋が明るくなるから」「新しい一日が始まる感じがするから」
- 例:「静かなカフェで読書するのが好き」→ なぜ? → 「落ち着ける空間だから」「一人の時間に集中できるから」「本の世界に入り込めるから」
- 例:「特定の音楽を聴くのが好き」→ なぜ? → 「心が安らぐから」「元気をもらえるから」「昔の楽しい記憶が蘇るから」
- 頭で考えすぎず、直感的に浮かんだ言葉を書き留めてみましょう。理屈ではなく、感覚や感情に焦点を当てます。「心地よい」「安心する」「楽しい」「ワクワクする」「落ち着く」といった形容詞や、それに紐づく状況を言葉にしてみます。
期待される効果
このワークを通して、自分の内面にある欲求や価値観が見えてくることがあります。例えば、「静かな空間が好き」という背景には「落ち着きや安心感を求めている」、「新しい一日が始まる感じが好き」という背景には「変化や可能性に対するポジ求的な感覚がある」といった洞察が得られるかもしれません。自分の「好き」が、どんな自分らしさや価値観につながっているのか、その輪郭が見えてくることで、自分自身への理解が深まります。これが自分軸を育む土台となります。
ワーク3:見つけた「好き」を日常に取り入れるワーク
見つけた「好き」は、リストアップするだけで終わりではありません。意識的に日常に取り入れてみましょう。
手順
- ワーク1とワーク2で見つけた「好き」や、そこから見えてきた自分の価値観を参考にします。
- 「今日、または今週、どんな『好き』を体験できるだろうか?」と考えてみます。
- 例:晴れた日なら、少し窓を開けて光を浴びる時間を作る。
- 例:静かなカフェが好きなら、短い時間でも立ち寄ってみる。
- 例:好きな音楽を聴く時間を設ける。
- 例:好きな香りの入浴剤を使ってみる。
- 例:好きな肌触りのブランケットに包まれてみる。
- スケジュールの中に、意図的に「好き」に触れる時間や機会を作ってみましょう。特別なことでなくても構いません。5分でも10分でも、意識してその感覚を味わうことが大切です。
期待される効果
見つけた「好き」を実際に体験することは、自分を満たす行為です。このようなポジティブな体験を積み重ねることで、日常の中の幸福感が増し、自分自身を大切にしているという感覚が育まれます。これは、自己肯定感を高める上で非常に重要な小さな成功体験となります。「自分のためにこれを選んだ」「これをすることで心地よさを感じた」という感覚は、「自分には価値があり、大切にされるべき存在だ」という肯定的な自己認識を育むことにつながります。
実践上のコツと注意点
- 完璧を目指さないこと: 「たくさん書き出さなきゃ」「毎日ワークをしなきゃ」と義務感に捉われる必要はありません。気が向いたときに、できる範囲で取り組むことが大切です。
- 他人と比べないこと: あなたの「好き」は、あなただけのものであり、優劣はありません。「こんなことで喜ぶなんて」と思ったり、「他の人はもっとすごいものが好きなのだろうか」などと他人と比較したりする必要は全くありません。純粋なあなたの感覚を大切にしてください。
- 無理のない範囲で継続すること: 一度に全てを変えようとせず、少しずつ日常に取り入れてみましょう。小さな一歩でも、継続することで変化を感じられるようになります。
- ネガティブな感情が出てきても大丈夫: ワークを通して、なぜかネガティブな気持ちが湧いてくることもあるかもしれません。そのような自分を責める必要はありません。ただ「今、自分はこんなことを感じているんだな」と受け止めるだけで十分です。
ワークを続けることで見えてくる変化
これらのワークは、劇的な変化をすぐに保証するものではありません。しかし、ご自身のペースで続けていくうちに、以下のような変化を感じられるかもしれません。
- 日常の中に、小さな幸せや喜びを見つけやすくなる
- 他人と比較する時間が少しずつ減り、自分の感覚を大切にするようになる
- 自分の内面への理解が深まり、自分らしい選択に自信が持てるようになる
- 「自分は自分で良いんだ」という肯定的な感覚が育まれる
まとめ
自己肯定感は、自分自身のすべてを完璧に好きになることではありません。良いところもそうでないところもひっくるめて、「これが自分なんだな」と受け止め、尊重できるようになることです。
今回ご紹介した「好き」を見つけるワークは、その第一歩として、あなたのポジティブな側面に光を当て、自分自身の価値を再発見するためのやさしい方法です。
忙しい毎日の中で、少しだけ時間を取って、あなたの心の中にある「好き」の声に耳を傾けてみてください。その小さな「好き」が、あなた自身の自己肯定感を育む大きな力となることでしょう。