自己肯定感を育む:自分の「良いところ」を見つけるやさしいワーク
自己肯定感が低いと感じる時、つい周りの人と自分を比較してしまい、自分の欠点ばかりが目についてしまうことはありませんか。SNSを見ていると、誰かの成功や充実した日々に触れて、自分には何もないと感じてしまうこともあるかもしれません。新しいことに挑戦しようと思っても、「どうせ自分にはできない」と、最初から諦めてしまうこともあるでしょう。
しかし、あなたの内側には、あなたがまだ気づいていないたくさんの「良いところ」や「価値」が存在しています。自己肯定感を育む第一歩は、こうした自分自身の肯定的な側面に意識的に目を向け、それを認めてあげることです。
この記事では、他人と比較して落ち込みやすいあなたが、自分自身の良いところに気づき、自己肯定感を育むためのかんたんで実践的なワークをご紹介します。
なぜ自分の「良いところ」に目を向けることが大切なのか
私たちは、社会や他者からの評価を気にしながら生きています。そのため、自分の「足りない部分」や「改善すべき点」にばかり目が行きがちです。特に自己肯定感が低い状態にあると、否定的な側面に意識が強く向き、ポジティブな面が見えにくくなります。
自分の良いところに意図的に目を向けることは、この偏った視点を修正し、自分自身をよりバランスの取れた目で見るための訓練になります。これは、他人との比較から生まれる劣等感を和らげ、自分自身の内側に価値を見出す力を育むことに繋がります。自分の良いところを認識することは、自分を大切にする自己受容の基盤となるのです。
自分の「良いところ」を見つけるワーク
ここでは、今日からでも始められる、自分の良いところを見つけるための具体的なワークを3つご紹介します。
ワーク1:自分だけの「良いところリスト」を作る
このワークは、自分自身の肯定的な側面を意図的に書き出すことで、自己認識を深め、良いところに焦点を当てる習慣を養うものです。
手順:
- ノートやスマートフォンのメモ機能など、書きやすいものを用意します。
- 静かで落ち着ける場所で、リラックスできる時間を作りましょう。
- 自分自身の「良いところ」だと思うことを、思いつく限り書き出していきます。どんなに小さなことでも構いません。
- 例:
- 人の話をしっかり聞くことができる
- 約束を守る
- 毎日ごはんを自分で作っている
- 花を綺麗に飾れる
- 困難な状況でも諦めずに考え続けることができる
- 動物が好きで優しく接することができる
- 部屋を片付けるのが得意
- 朝、自分で起きられる
- 新しいことを学ぶのが好き
- 誰かのために何かをするのが苦にならない
- 例:
- 書き出す項目に詰まったら、視点を変えて考えてみましょう。
- 性格・内面について: 優しい、真面目、誠実、忍耐強い、明るい(内向的でもOK)、好奇心旺盛、責任感が強い、柔軟性があるなど。
- 行動・習慣について: コツコツ努力できる、早起き、整理整頓が得意、継続力がある、人に感謝を伝えられるなど。
- 能力・スキルについて: 特定の知識がある、手先が器用、アイデアを出すのが得意、問題を解決しようとする、語学力があるなど。
- 他人からの評価(過去に言われたことなど): 〇〇さん優しいね、〇〇さんがいると安心する、丁寧に仕事をするね、いつも笑顔だねなど。
- 当たり前だと思っていること: 毎日仕事に行っている、家事をしている、友人と連絡を取っている、困っている人に席を譲るなど、日常の中で無意識にできている良い行動も立派な良いところです。
- 最低10個、できれば30個を目指してみましょう。リストは後で見返せるように保管しておきます。
期待される効果: 自分の肯定的な側面に具体的に目を向けることで、漠然とした自己否定感を和らげることができます。「自分には何も良いところがない」という思い込みが覆されるきっかけになります。
実践のコツ: 一度にたくさん書き出そうとせず、毎日少しずつ書き足していくのも良い方法です。完璧なリストを目指す必要はありません。思いついた時に気軽に書き加えていきましょう。
ワーク2:ポジティブフィードバックノート
このワークは、他者からの肯定的な言葉や、自分がうまくできたと感じた出来事を記録することで、外部からの良い評価や自分の成功体験を意識的に蓄積するものです。
手順:
- 小さなノートやメモ帳、またはスマートフォンのアプリを用意します。
- 日常の中で、誰かから褒められたり、感謝されたりした言葉を記録します。
- 例:「〇〇さんのおかげで助かったよ」「その資料、すごく分かりやすかった」「いつも笑顔でいいね」など。
- 自分が「今日はこれがうまくできたな」「少し成長できたな」と感じた小さな成功体験も記録します。
- 例:「今日の会議で自分の意見を言うことができた」「ToDoリストの項目を全て完了できた」「新しいレシピに挑戦して美味しくできた」など。
- 記録する際は、日付と具体的な内容(どんな言葉だったか、どんな状況だったか)を添えると、後で見返した時に鮮明に思い出すことができます。
期待される効果: 他者からの肯定的な評価や自分自身の小さな成功は、自己肯定感を高める強力な材料になります。このノートを見返すことで、「自分は人に良い影響を与えている」「自分にもできることがある」という自信を育むことができます。
実践のコツ: 「こんなこと、記録するほどのことかな」と思わず、どんなに小さなことでも積極的に記録しましょう。特に、自己肯定感が低い時は、良い出来事を小さく見積もりがちです。客観的な事実として記録することが重要です。
ワーク3:もし親友だったら、自分に何と言うだろう?
このワークは、自分に対する批判的な視点から離れ、親しい友人に対するように自分自身に優しく肯定的な言葉をかける練習です。他人比較で落ち込む時、私たちはしばしば自分自身に厳しい言葉を投げかけています。
手順:
- あなたが他人と比較して落ち込んだり、自分の欠点ばかりに目が向いたりしている時の状況を思い浮かべます。
- その時、もしあなたの親友が同じように落ち込んでいたら、あなたは何と声をかけるかを考えます。どのような言葉で励まし、慰め、その人の良いところを伝えるでしょうか。
- 例:「そんなに自分を責めなくて大丈夫だよ」「〇〇には〇〇の良いところがあるじゃないか」「少し休んでもいいんだよ」「挑戦したこと自体がすごいことだよ」など。
- 考えた言葉を、今度は自分自身に向けて語りかけます。心の中で唱えるだけでも良いですし、声に出してみたり、紙に書き出してみたりしても良いでしょう。
- このワークを、自分が自分に厳しくなりがちな時に意識的に行ってみましょう。
期待される効果: 自分自身に対する否定的で攻撃的な内なる声に気づき、それをより優しく建設的な声に置き換える練習になります。自分を受け入れ、労わるセルフ・コンパッションの感覚を養うことに繋がります。
実践のコツ: 最初は少し不自然に感じるかもしれません。しかし、練習することで、自分自身に対する「もう一人の優しい自分」を持つことができるようになります。判断することなく、ただ自分に寄り添う言葉をかけることを意識しましょう。
ワークを続ける上での大切な視点
これらのワークは、すぐに劇的な効果が現れるものではないかもしれません。しかし、継続することで、少しずつあなたの内面に変化をもたらします。
- 完璧を目指さない: 毎日できなくても、リストがすぐに埋まらなくても大丈夫です。「やらなければ」と義務にせず、できる時に、できることから取り組んでみましょう。
- 小さな変化に目を向ける: 自分の良いところに目を向けられた自分、小さな成功を記録できた自分、自分に優しい言葉をかけられた自分。そうした「できた自分」を認め、褒めてあげることも大切です。
- 他のワークと組み合わせる: 「自分ほめノート」や「セルフ・コンパッション」など、他の自己肯定感を育むワークと組み合わせて行うと、より多角的に自分を肯定する力を養うことができます。
まとめ
自己肯定感を育む道のりは、一足飛びには進まないかもしれません。特に、長年自分の欠点にばかり目を向けてきた習慣を変えるには時間と根気が必要です。
しかし、今日ご紹介した「自分の良いところを見つけるワーク」は、その道のりのための力強い一歩となります。自分自身の肯定的な側面に意識的に光を当てることで、他人との比較からくる苦しさを和らげ、自分自身の内側に揺るぎない価値を見出すことができるようになります。
ぜひ、今日から一つでも良いので、ご紹介したワークを試してみてください。そして、リストに書き出されたあなたの良いところや、ノートに記録された小さな成功を、あなた自身の宝物として大切にしてください。あなたには、あなたのままで素晴らしいところがたくさんあるのです。